前編では、日本の少年野球における保護者の負担について考えてきた。その問題点をクリアに把握するため、後編では海外の事例と比較して見てみたい。アメリカを拠点に活動するスポーツライター・谷口輝世子氏に、彼の地のスポーツ事情を聞いた。
「アメリカの家庭は、子どものスポーツ参加についてとても熱心です。もともとスポーツが盛んなお国柄ということに加え、年齢があがってきたときの競争で出遅れないようにという意味合いもあります。アメリカでは高校での課外活動(運動部、ボランティア、芸術活動など)も大学入学選考の評価対象になります。そういったこともあって、高校の運動部に入りたがる生徒は多いのですが、日本と違ってアメリカの中学・高校の運動部は、たとえ公立校であっても希望者全員を入部させず、トライアウトで選考します。そのため、中学や高校からそのスポーツを始めようとしても簡単には入れません。その際には、子どもに『なんでぼくが小さいときからやらせてくれなかったの?』と親は言われてしまうかもしれません。中学・高校での子どもの選択肢をなるべく広くして、大学入学選考にどのくらい有利なのかはわかりませんが、それでも親たちは積極的にサポートしているのです」
「子どもの試合の送迎で土日が終わる」
とはいえ、小学生のチームですら、全入ではない。アメリカの小学生のスポーツチームには「トラベル」と「レクリエーション」の2つがある。トラベルチームとは、その名のごとく泊りがけも辞さない遠征で試合をおこなう競技チームのことで、人数制限があり、トライアウトが1年ごとに実施されるシビアさだ。一方のレクリエーションチームは比較的練習が易しく、希望者の多くは入団できるという。
当然だが、中学・高校の運動部を視野に入れるのであれば、競技チームに所属しているほうが有利である。競技チームは同じレベルのチーム同士で競うため、そういったチームが近隣になければ、ときには100km離れた街まで遠征に行く。保護者の土日は、その送迎でほぼつぶれてしまうという。
「アメリカでは、都市部以外では車移動が必須。防犯の観点からも子どもをひとりで練習や試合に行かせられません。わたしの子どもはアイスホッケーの競技チームに所属し、半年で70試合ほどをこなしていましたから、試合の付き添いで土日が終わることもしばしばでした。自分を含め、遠征先でパソコンを開いて仕事をする親はたくさんいますよ。子どもが3人以上いて、土日にみんな別の場所で試合をするとなると、夫婦だけでは送迎が回らないので、チームメイトの親に頼むこともあります。送迎のお願いを一斉メールすれば、大抵は誰かが手を差し伸べてくれます。アメリカでは相乗りを『カープール』といいますが、他の子どもを送迎することも『カープール』と呼ばれ、このような互助なしで、アメリカの子どものスポーツは成り立ちません」
日本のお茶当番に似ているが…「当番制ではありません」
吹雪の中の長距離ドライブや、よその子を乗せて走るプレッシャーで疲労しながら試合会場に着いた後も、保護者の仕事はある。
からの記事と詳細 ( 少年野球、母親たちを悩ます「お茶当番」問題…アメリカで同様の問題はないのか?「日本のお茶当番に似ていますが、当番制ではありません」(沼澤典史) - Number Web )
https://ift.tt/3HXCP3C
No comments:
Post a Comment