日本茶離れが言われて久しい中、茶業が主要産業の一つの神奈川県清川村は、本年度から人気回復策に取り組んでいる。粉末化した茶葉をスティック状にして、お湯やミネラルウオーターを注ぐだけで日本茶ができる商品「チャバコ」を使って、同村産のお茶を前面に押し出すという。使用するのは、もちろん清川産の茶葉だけ。タバコの箱に似せている「チャバコ」のパッケージも村独自の図柄にして、村内の道の駅などで販売する。
「本当においしいお茶は一口飲んだだけで、若い人も分かる。若い茶葉は40~50度でいれると苦みが消えて、うま味調味料のようなおいしい成分が出てくるんですよ」。村の茶業の第一人者は、ペットボトルのお茶では知ることのできない味わいがあると胸を張った。
ただ、ネックは100グラムで2千円程度と高価格なこと。若葉が小さい時に摘むため、多くは採れない。「本当においしいものを飲めば、日本茶のおいしさが分かるのですけどね」
1967年に父親が茶を植栽し、5年後から携わった。JAあつぎ茶業担当も務め、お茶との関わりは半世紀を優に超える。生産者の作業を支援するJAあつぎチャピュア清川工場長や県農協茶業センター取締役も務める。
今年の清川茶は、3月の寒の戻りで桜の開花が遅くなったように初摘みも遅れそう。「初摘みは萌芽(ほうが)の32~35日後。去年の萌芽は3月24日だったが、今年は4月5日と遅い」と、不安をのぞかせる。
それ以上の心配事は、茶業の行く末だ。販売価格は下がり、生産者の高齢化も進む。ウクライナ情勢の影響を受けた肥料などの高騰も追い打ちをかける。
寿命が60年と言われる茶樹。村の基幹作物として植えられた茶樹も57年がたとうとしている。1975年には30ヘクタールの茶園で約100人の生産者が栽培していたが、今では8ヘクタールに30人しかいない。「生産者も意欲が落ちていく一方だ」と嘆いた。
だが、清川産のお茶に新たな希望もある。チャバコに加えて、新たな生産者誕生の機運だ。厚木市経由で東京都内へのアクセスも便利な村。移住ブームで注目が高まる。「横浜の人が移住に興味があるようだ。農業、茶業にも関心があるらしい」。村の茶業再興への期待は消えていない。(古川雅和)
<日本茶の現状> 生産量は減少傾向にある。農林水産省などの統計によると、2023年の生産量は7万5千トンで10年前から1万トンも減った。
ただ、抹茶にするてん茶の生産量は増加傾向にある。訪日客が好む抹茶味の菓子やアイスなどで需要が増えているためだ。主な産地は鹿児島県、京都府、静岡県になる。
ペットボトルなどの緑茶飲料市場も伸びが続く。飲料メーカーの伊藤園の予測では、23年の市場は単価上昇もあり金額ベースで4570億円になる。これまでのピークは05年の4470億円だった。
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