東京23区で最大の農地がある練馬区で農園、福祉作業所、ベンチャー企業が連携して、廃棄されるアスパラガスの茎を使ったお茶を作った。食品ロスを削減するだけでなく、障害者の工賃アップや孤立化を防ぐ取り組み。区内の飲食店やネットで販売しており、関係者は「練馬の名産になってほしい」と期待する。
商品名はアスパラの緑から連想した「翠茎茶(すいけいちゃ)」(十グラム五百四十円)。透き通った薄茶色でアスパラそのものの味はしないが、根菜の香りや甘みが感じられる。
アスパラは区内の白石農園で生産。知的障害者が働く近所の「かたくり福祉作業所」で根元側の四センチ程度が切り落とされ、商品として出荷される。根元側の茎は本来捨てられるが、これを別の福祉作業所「あかねの会就労支援室」に運んで乾燥、焙煎(ばいせん)した後、袋詰め。区内で事業をするベンチャー「REDD(レッド)」社が販売展開する。
二〇二一年夏に販売を開始。地産地消を掲げる飲食店などから注文があり、初年度は約十キロを完売。年間八百キロの茎の廃棄を削減したという。
仕掛け人はREDD代表の望月重太朗さん(43)。別事業でお茶の商品開発に携わった経験があった。アスパラの一部が捨てられていることを知り「お茶にできないか」と自宅で試作。白石農園に提案して事業化した。
かたくり福祉作業所はもともと野菜の処理を、あかねの会就労支援室は食品加工を手がけ、専用機材も持っていたため、初期費用を抑えられた。生ごみとして捨てていた茎をREDDが買い取る上に、仕事も発注するので、福祉作業所の利用者の工賃を上げられる。
望月さんは「製造を業者に発注するには大量のロット(最小単位)が必要。福祉作業所は少ない発注にも応じてくれる上、作業は非常に丁寧だ」と農福連携の利点を語る。
かたくり福祉作業所支援員の高橋弘和さん(42)は「工賃が上がり、ごみ出しの経費も減るのでメリットしかない」と感謝。あかねの会就労支援部長の菊地悟さん(44)は「通常は郵便物の宛名シールを貼る仕事が多いが、お茶づくりは地域に貢献できるので、利用者のやりがいにつながる」と喜ぶ。
福祉作業所は社会で十分に認知されておらず、利用者は地域で孤立しがちだ。白石農園の立石菜保子さん(38)は「福祉作業所とつながりができたことが大きい。こうした連携をもっと増やし、何かあったときに地域で支えあえる社会をつくりたい」と話した。
<福祉作業所> 正式には就労継続支援B型事業所と呼ばれ、障害や病気などを理由に一般企業への就職が困難な人が、雇用契約を結ばずに働く訓練施設。仕事は比較的軽度な作業で、報酬は生産活動に伴う工賃のため、最低賃金を下回るケースが多い。二〇二〇年度の全国平均工賃は月一万五千七百七十六円で、東京都はさらに下回り一万四千七百七十七円だった。
都の担当者は「明確な理由は分からないが、都心部はほかに企業が多く、B型事業所に仕事が回ってこないのではないか」と推測。「利用者が自立する上で工賃は十分ではない」として、都は事業所の販路拡大や品質向上に向けた研修会などを実施している。
文・原田遼/写真・由木直子
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