3年に1度開かれる世界最大級のお茶の祭典「世界お茶まつり2022秋の祭典」(県など実行委主催)が20~23日、静岡市駿河区のグランシップで開かれる。新型コロナウイルス禍やリーフ茶の消費低迷など茶業にとっての逆境が続く中、参加事業者は消費者目線で新たな楽しみ方を伝える。各国の喫茶風景紹介など学術・文化面でも連日行事が展開され、多面的に茶の魅力に触れる機会となりそうだ。
外国人旅行者へ発信 コロナ対策講じ準備 「ティーツーリズム」回復期待
シズオカのお茶技術を国に持ち帰りたい-。大型観光バスから次々と英国人が降り立ち、一面に広がる茶畑を望む。地元茶業者の解説に耳を傾け、熱心に質問を繰り返す。
英国の農業法人代表ら約30人が10月上旬、島田市を訪れた。ふじのくに茶の都ミュージアムや茶畑を見て回り、歴史や伝統農法にこだわる茶づくりの現場を体験した。
最後に訪れたカネイ一言製茶では、茶葉を配合して火を入れる「仕上げ」の作業場を見学。加熱温度や茶種など、さまざまな条件下で色合いや味、香りが大きく異なる茶の醍醐味(だいごみ)を知り、感嘆の声を上げた。
研修旅行を主導した英国で紅茶事業を手がけるジョナサン・ジョーンズさん(51)は「先進的な茶業の現場を学びたかった。将来的には、英国に緑茶の文化を広められれば」と語る。
政府により訪日観光客数の上限撤廃や、国内観光支援事業「全国旅行支援」などが実施されている。茶摘み体験や茶畑を望むテラス、茶葉を使った料理-。新型コロナウイルス禍前に茶を観光資源として活用する「ティーツーリズム」を手がけてきた事業者には期待感が生まれつつあり、コロナ対策を講じながら準備を進める。
カネイ一言製茶の職人、一言進さん(72)は「国内外に静岡の茶文化を伝える機会を大事にしていきたい」と語る。
静大生の動き、盛り上げの一助 商品開発や新事業 企業巻き込み成長
■農業体験施設を構想
茶の香りや歴史に魅せられて商品開発や事業立ち上げに挑み、地域の盛り上げにつなげようとする学生たちの動きが活発さを増している。アイデアや発信力を磨き、クラウドファンディングで資金を調達して活動の幅を広げるなど、民間企業を巻き込みながら着実に歩みを進める。
静岡大の学生が2019年に立ち上げたサークル「一煎」は、学術研究や茶農家の手伝いを通じて茶の知識や技術を学ぶ。化学成分を使わずに果物から香りを抽出するフレーバーティー、コメから作る玄米茶などを開発。静岡市葵区常磐公園で開かれる「常磐朝市」に参加したり、天神屋(静岡市)と連携しておにぎりと茶の朝食メニューを考案したりして、若者目線で茶の魅力を探ってきた。
「静岡市お茶まつり」のブースに出展し、市内中山間地で栽培する在来種の香りや味わい、バナナとほうじ茶のフレーバーティーの風味をアピールする。
静岡市内にコンテナ型の農業体験施設を造る構想について、クラウドファンディングを用いた新事業として紹介する。子どもたちの手でハーブを栽培してクラフトコーラやハーブティーを作る「食育体験」の場を設けることで、幼少期に自然と触れ合う機会の増加を図る。代表を務める農学部4年の星野孝太さん(22)は茶に興味を持って同大に進学した。「お茶の魅力を学び、伝える活動を続けていく」と話す。
■Tシャツやバッグ販売 茶箱に貼る蘭字魅了
「かわいい、すてきと感じたデザインが広く知られていなかった。発信するチャンスと感じた」。
静岡大地域創造学環3年の松本侑さん(21)は昨年、授業の一環で訪れたフェルケール博物館(静岡市清水区)で、明治~昭和期の茶輸出に使われた茶箱に貼る版画のラベル「蘭(らん)字」に心を奪われた。花や動物など多様なイラストを多色刷りであしらった「レトロポップ」なデザインに興味を持って調べると、祖父母が営む茶業と深い関わりがあると知った。
大学の同級生と商品製作プランを考案。県中部のビジネスコンテストなどに応募を重ね、入賞賞金を獲得して実現にこぎ着けた。
蘭字を印刷したTシャツやバッグ、巾着、ステッカーを藤枝市観光案内所や藤枝駅前コワーキングスペース「フジキチ」などで販売してきた。世界お茶まつりでは22日、屋外エリアにブースを設ける。売り上げは全額、茶文化振興を担う機関に寄付する。
からの記事と詳細 ( 世界お茶まつり開幕 茶の魅力多面的に 23日まで静岡・グランシップ|あなたの静岡新聞 - あなたの静岡新聞 )
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