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Friday, October 14, 2022

密避け換気お茶会再開 世間話「一番の楽しみ」 - 読売新聞オンライン

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 大郷町の仮設住宅団地の集会所から、楽しげな笑い声が聞こえてくる。木曜午前恒例のお茶会だ。

 9月末のこの日は女性4人が世間話を楽しんでいた。お茶受けは各自で持ち寄る。ナス漬けやせんべいの隣に、大松沢征子さん(75)が「いま山形の次女から届いたばかりなの」と言って新鮮なマスカットを並べると、「あらーおいしそう」と歓声が上がった。

 密にならないよう、4人は互いに距離を取って座る。全ての窓は換気のために開け放たれ、秋を感じさせる冷たい外気が吹き込んでいた。

 仮設団地には今も18世帯53人が暮らしている。お茶会は住人の交流の機会をつくろうと、仮設入居開始から約1か月後の2020年1月、町社会福祉協議会の声かけで始まった。台風19号で自宅が全壊し、夫の修さん(78)とともに入居することになった大松沢さんも毎週足を運んだ。ほかの入居者と仲良くなれる場は貴重で、うれしかった。

 ところが、その春に新型コロナ感染が広がり、お茶会は中断。自宅に招くこともはばかられ、隣近所との会話は途絶えた。

 中断から3か月後に社協がお茶会を再開したのは、入居者たちの強い要望だった。「部屋に閉じこもって孤立する方が、コロナよりよっぽど体に悪い」。訪問すると、あちこちでそんな声が聞かれた。

 当初は食べ物の持ち寄りを禁じ、会話は透明なアクリル板越し。相手の言葉がよく聞き取れず、もどかしかったが、それでも5人ほどの住人が毎回集まって雑談に花を咲かせた。

 大松沢さんの隣人、武川妙子さん(78)も常連の一人だ。

 趣味は土いじり。だが、台風で自宅の隣にあった大根やナスの畑は全滅してしまった。仮設暮らしの運動不足の解消にと通い始めた隣町のプールも、コロナ対策が強化されると、町外からの利用ができなくなった。

 そんな中、お茶会だけは変わらず続いている。台風前は顔見知り程度だった大松沢さんとも、いまは「妙ちゃん」「征子さん」と呼び合う仲だ。「これが一番の楽しみ。また友達に会えると思うと、次の1週間を頑張れる」

 武川さんは昨年の暮れ、長年一緒に暮らした義母のつるよさん(当時101歳)を亡くした。被災をきっかけに町内の介護施設に入所。面会に行くと、耳の遠いつるよさんは「(台風で被災した)家に帰りたい」と何度も繰り返した。

 災害公営住宅への転居は早くても年末ぎりぎりになる見通しで、一周忌もこのまま仮設住宅で迎えることになりそうだ。「本当は被災前の家に戻りたかっただろうけど、せめて今はここで一緒にいてあげられたら」。義母の骨つぼはしばらく手元に置いておくつもり、と武川さんは語った。

(この連載は青木聡志、林航平が担当しました)

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