静寂を味わうように、美しい椅子に腰掛けてコーヒーを楽しむ。今回訪ねたのは、そんな大人のための喫茶店「点 喫茶室」です。限られた客席は、一人の時間や言葉少なに過ごすことの心地よさを、知る人だけの特等席。10月から新店舗へと移転するため、9月末までとなるプライベートで上質な空間を今のうちに満喫することにしましょう。
■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
自分のためのぜいたくを許す「茶室」
柔らかなベージュの土壁が印象的な空間には、北欧ヴィンテージの椅子が三脚だけ。お一人様用のゆったりとしたハンス・J・ウェグナーのシェルチェアからは、姉小路通が眺められます。2人席のテーブルには、フィン・ユールのアームチェア。壁には、魔よけと伝えられる韓国の大麻飾りが凜(りん)とした存在感を放ちます。
名作と呼ばれる椅子に体をゆだね、上質なしつらえを目で楽しみつつコーヒーを待つ時間は、まるで茶室でもてなされているよう。空間デザインからインテリア、お湯を沸かすやかんや水のグラスの一つひとつまで、敬愛する作家の作品を選んだというオーナーの松村めぐみさんはこう話します。
「ここは、大人のための喫茶室。個室のみのプライベートサロン(美容室)併設の喫茶として、サロン帰りのお客様にゆっくり過ごしていただければとスタートしました。髪形を変えるって、自分のリフレッシュの時間でもあるじゃないですか。その延長で、誰かとおしゃべりするというよりも、自分のための静かな時間を過ごしてもらいたかったんです」
洗練された空間と心を満たすメニューは口コミで広がり、喫茶のみの利用客が増えるように。少人数で静けさを楽しむ喫茶室というコンセプトはそのままに、席数を増やした新店へと移転準備中です。モダンな茶室のような空間を堪能できるのは今だけとなりました。
季節の果実がたっぷり。断面にときめくフルーツサンド
芳醇(ほうじゅん)な香りのコーヒーのおともは、季節の果物を使ったフルーツサンド。フォークを使わず片手で口に運べるので、本を読みながら食べたり、二人でシェアしたりすることもできます。カットした断面の美しさは、フルーツサンドの最大の魅力。果物に合わせて、挟み方や切り方も変わります。
「自分好みの味のフルーツサンドが食べたくて、パンや純生クリームなど、納得のいくものを探し回りました。フルーツ本来の風味を生かして、甘みはほとんど加えずに。果物屋さんからその時期一番おいしいものを届けてもらうので、旬が終わると終了です」(松村さん)
残暑の厳しい時期には、フレッシュな果実をふんだんに使ったクリームソーダも癒やし。グラスからこぼれるほどに注がれたクリームソーダは、飲むというより食べる感覚に近いほど、果肉たっぷり。果肉100%のシャーベットにソーダを注ぎ、さっぱりとしたアイスクリームとフルーツを添えた満足感のある一品です。
移転先では、1階が京都では珍しい葉巻の専門店「点 葉巻室」、2階が喫茶室になる予定。煙を深く吸い込まず、香りや風味をたのしむ葉巻は、コーヒーと共通した嗜好(しこう)品としての楽しみがあるのだそう。大人が自分のための豊かな時間を過ごす場所として、ますます注目が集まります。現在の建築美とインテリアを味わえるのは9月末まで。心満たす空間と季節の恵みで、みのりの秋を堪能してはいかがでしょう。
■点 喫茶室
https://www.instagram.com/ten_kyoto/
BOOK
大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。
からの記事と詳細 ( 名作椅子でコーヒーを 大人が自分の時間を過ごす「点 喫茶室」 - 朝日新聞デジタル )
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