「第37回『信長公と蘭奢待』では、織田信長(染谷将太)打倒で挙兵した足利義昭(滝藤賢一)が、どのように描かれるか期待していました。ところが、義昭が最も頼りにしていた武田信玄(石橋凌)をはじめ、朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)、浅井長政(金井浩人)といった武将があっさり死んでしまい、信長VS.義昭の攻防が一気にスルーされて……。とくに長政は、その死をナレーションのみで語られる“ナレ死”扱いだったのは残念でした」
20日放送の『麒麟がくる』について、こう語るのは戦国時代に詳しい歴史学者の渡邊大門さん。
放送終了後、ネット上でも『何で重要な後半戦をナレ死で終わらせるの? もったいない!』『怒涛の急展開。前半期と時間の配分が全然違う』『足利義昭&駒(門脇麦)のシーンは不必要』といった疑問や不満の声が多く上がっていた。
ドラマでは浅井長政がナレ死したため、長政の正室・市(織田信長の妹)や、その2人の間に生まれた3人の娘、茶々、初、江についてもまったく描かれなかった。おそらく、今後のストーリーの中で、とくに重要な役どころとして登場することがないからだと推察できる。
だが、ネット上でそんな批判が飛び交うのも、今回の大河に期待するファンが多いという証拠。
20日放送の同時間帯の裏番組には、テレビ朝日系「M-1グランプリ2020」、フジテレビ系「鬼滅の刃」〈柱合会議・蝶屋敷編〉があったために、視聴率の低下が懸念されていた。結果は、「M-1~」は19.8%、「鬼滅の刃~」が14.4%と、予想通り高視聴率をマーク。ところが、「麒麟がくる」も最近の通常回とほぼ変わらずの12.2%をキープ(※視聴率数字はいずれも関東地区の平均世帯視聴率、ビデオリサーチ調べ)。
大河ファンにとっては、お笑いや話題のアニメよりも、やはり本能寺の変に向けてどんな展開になるのか、オンタイムでチェックしたいという人が多かったのだろう。
そして、次回放送(第38回『丹波攻略命令』)では、いよいよ明智光秀(長谷川博己)が残した功績の中でも有名な丹波攻めが始まる。天正3年(1575年)、光秀は信長から丹波攻略を命じられ、ここから約4年にわたる苦難の戦いの幕が上がる。
はたして、ドラマではどのように描かれるのか――。
「天正7年(1579年)の丹波八上城の攻防で、光秀が丹波の土豪衆に宛てた文書が残っています。『敵兵を1人たりとも残さず抹殺せよ。首の数に応じて恩賞を与える』といった内容で、光秀の残酷で非情な一面を記した史料(『小畠家文書』)です。
光秀は波多野秀治が居城とする八上城を包囲して、砦を作って兵糧攻めで追い込んだ。ドラマでは、信長の非情な比叡山焼き討ち命令に反し、光秀は女、子どもは逃がしたというように描かれていました。しかしこの丹波攻略では、光秀自身がかなり残酷なことをやっていたのです」(渡邊さん)
史実では、丹波攻略のクライマックスとなる八上城の攻防までに、味方の裏切り、敵軍の攻勢による一時撤退、そして妻の死など、光秀にはさまざまな苦難が待ち受けている。だが、光秀は丹波攻めを再開した2年後に、八上城を陥落させて丹波を平定。信長から賞賛を受けるのだ。
「丹波攻略における光秀の非情な一面については、これまでのドラマ展開からして、あまりよろしくないシーンとなるため、またナレーションでスルーするのではないでしょうか」(渡邊さん)
光秀が丹波を平定した後、信長の権力はさらに強まる。
「本能寺の変の前年、天正9年(1581年)、信長は己の強さを見せつけるために、軍を京に総動員して大規模な軍事パレードを行います。いわゆる『京都御馬揃え』です。史料には、招待された正親町天皇が喜ばれたと記されていますが、歴史研究者の間では、信長が天皇を威圧するためにやったという説が根強くあります。ドラマの中で、これから朝廷と信長の関係性をどのように描いていくのか、注目しています」(渡邊さん)
最終回まで残り7話。次回放送から、明智光秀の次女・たま(後の細川ガラシャ)役として芦田愛菜、正親町天皇(坂東玉三郎)の嫡男、誠仁親王役に加藤清史郎らが登場する。元天才子役が大河ドラマで見せる“大人の演技”にも注目していきたい!
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