アマチャの花
日本では一般的に『お茶』と言えば緑茶を指し、歴史的に奈良・平安時代に遣唐使や留学僧によってもたらされたと言われています。喫茶という言葉があるように、私たちの生活の中でお茶を嗜むことは習慣の一つにもなっています。緑茶の代表的な風味と言えば“渋み”ですが、これはタンニンあるいはカテキンと言われる成分によるものです。
ここでは、独特の“甘味”が特徴的なお茶“アマチャ(甘茶)”についてご紹介したいと思います。アマチャは日本の中部山地に自生するユキノシタ科の落葉性の低木です。生薬やお茶として使われるのは若葉ですが、5~6月に咲く花(実際はガクの一部)はガクアジサイによく似た上品な雰囲気を醸し出しています。因みに、名前が似ていて混同されることがあるアマチャヅルはウリ科の植物で、アマチャとは全く異なる植物です。アマチャの市場品は栽培品のみで、主に長野県や岩手県の一部の農家で栽培されています。
灌仏会(花祭り)の様子
アマチャの木を寺院などの庭先で見かけた方もいらっしゃるかもしれませんが、これは毎年4月8日に行われるお釈迦様の生誕を祝う仏教行事の「灌仏会(かんぶつえ)」と関係があります。この行事は「花祭り」の名でも親しまれていて、春の花々で飾られた小さな花御堂の中に、アマチャで満たした水盤の中央に置かれた仏像にアマチャをかけて祝うものです。
お茶に使用される若葉は本来、苦くて甘味がほとんどありません。しかし、夏頃に葉を採取した後、数日間日干しし、水を噴霧してむしろをかぶせて発酵させた後、手で揉んで乾燥して仕上げることで甘くなります。この甘味成分はフィロズルチンという成分で、お砂糖の約600倍もの甘さがあり、かつて砂糖が普及するまでは甘味料として利用されていました。民間療法でも糖尿病患者の甘味代用として、その他、胃弱・食欲不振・利尿・口臭除去などにも利用されています。また、アマチャのエキスに関する研究報告によると、抗菌作用、抗アレルギー作用、抗腫瘍作用、利胆作用などいろいろな薬理作用が認められています。
さて、お砂糖の甘味と言えば瞬間的なキレのある味覚が特徴ですが、アマチャの甘味は上品で爽やかさが特徴です。アマチャ以外で甘いお茶と言えば、低温で浸出する高級煎茶の玉露や、中国原産の甜茶(てんちゃ)が有名ですが、これらを飲み比べてみるのも楽しいかもしれません。とかく現代はストレス社会と言われ、様々な病気との因果関係が明らかとなってきています。心身の疲労回復時に、アマチャを飲んでホッとひと息ついてみてはいかがでしょうか?
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April 10, 2020 at 11:51AM
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