正月のマグロ初競りは一年の景気を占う明るい話題だ。茶どころ・静岡では4月の新茶初取引の最高値に関心が集まる。2023年は1kg120万円で、1kg単価で比べると東京・豊洲市場の「一番マグロ」より高い。落札した製茶問屋は、値段に思いを込めた。
最も早い初取引 色よく味も濃い
この記事の画像(15枚)茶どころ静岡に新茶シーズンの到来を告げるの新茶の初取引。2023年は静岡茶市場(静岡市)で4月13日に行われた。
春先に暖かい日が続いた影響で早い摘み取りが予想されることから、これまでで最も早い時期の開催となった。
農協の職員や茶商など800人ほどが集まり、交渉が成立すると手打ちの音が会場に響いた。生産者によると、2023年の新茶は色の乗り具合がよく、味も濃いという。
1杯分は約6000円? 最高値のワケ
初取引で最高値をつけたのは機械でもまれた静岡市清水区両河内産の「やぶきた」で、1kgあたり120万円だ。機械揉みのお茶では、過去 最も高い。
東京・豊洲市場の2023年マグロ初競りで、最高値は大間産クロマグロ3604万円(212kg)だった。1kg単価にすると17万円なので、両河内産「やぶきた」の方が高い。
両河内茶業会(販売者)・望月 秀樹 会長:
正直うれしい。茶業界全体がうれしいという気持ちと、驚きの気持ちと両方です。これから本格的に一番茶のシーズンが始まるが、それに向けてやる気が高まってくる
和田長治商店(購入者)・和田 夏樹 社長:
(生産者の)皆さんに今までの分の恩返しをして、またこれからも恩返しをしていきたい思いがあるので、この金額にさせてもらいました
落札した製茶問屋・和田長治商店は祖父の代から両河内産のやぶきたを購入し、毎年 初取引では縁起の良い1kg8万8888円で落札していた。
今年は新たに和田さんが社長に就任したため、生産者へのこれまでの恩返しのつもりで両河内産に注目してもらおうと、最高値を狙ったということだ。
13日の県内産の平均価格は1kg6963円なので、120万円がいかに高値かわかる。静岡茶市場によると、この値段のお茶を1杯分に換算すると約6000円になるそうだ。
最高値の常連は惜しくも…
ところで、最高値の常連で、2022年は静岡茶市場の過去最高額を記録したお茶がある。1kg単価196万8000円をつけた富士宮産の手揉み茶「さえみどり」だ。
2023年は111万1111円で、両河内産「やぶきた」の120万円にはとどかなかった。
しかし気候にめぐまれ香りがよく、例年を上回る出来映えだそうだ。
さえみどり生産者・渡邊 勝彦さん:
今までさえみどりを見てきた中で、一番良い出来。生葉の段階で言えるのは、香りがとにかく良かった。蒸した段階でもすごく甘い香りがした
お茶の気持ちになって手もみ
初取引に出品する2日前に 富士宮茶手揉保存会によって手もみ作業が行われた。
56秒間 生葉を蒸した後、焙炉(ほいろ)と呼ばれる作業台の上で、温度を保ちながら約5時間 手揉みをして仕上げた。
富士宮茶手揉保存会・鈴木 英光 会長:
香りや手触りを実感して、「これから新茶のシーズンが始まる」というワクワクした思いと、お茶に対する期待感でいま充実しております。お茶の気持ちになりながらもみ上げないと、素晴らしい お茶はできない。今回はそれが上手にうまく、ばっちりいった
さわやかな香りとすっきりした味わいが特徴のさえみどり。2023年の最高値には届かなかったが、保存会の鈴木会長は「残念ですが、これからもおいしいお茶を作っていきたい」と話していた。
新茶は4月下旬に出荷のピークを迎える見通しだ。
茶葉でいれる新茶の色合いや香りは格別だ。ぜひ、味わって初夏の訪れを感じてほしい。
(テレビ静岡)
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