「力を貸してもらえませんか」。東京都内の老人ホームの事務員だった長沢英夫(68)のもとを、一人の男が訪ねてきた。りそなグループの「首都圏リース」(東京)の執行役員(現・常務)、水本達也(59)である。2014年のことだ。
埼玉県入間市の金子台にある広大な茶畑を「何とか守りたい」と水本は言った。県内の茶畑の4割近くが集まり、「狭山茶」を象徴する場所だ。だが、緑茶の消費の低迷を受け、茶作りをやめる高齢の農家が絶えない。
伝統文化の衰退に危機感を持つ県の幹部から相談を受けたのが、りそなグループだった。緑茶の落ち込みの一方で、ペットボトルの茶飲料の消費は伸びている。農家と飲料メーカーをつなぐことができないかと、企画部門にいた水本は考えた。
翌15年、首都圏リースは入間市に新会社をつくる。県が設けた「農地バンク」を通じて畑を借り、茶葉を作る「首都圏アグリファーム」だ。社長に水本、常務に長沢が就いた。埼玉りそな銀行の元行員の長沢は金子地区の出身で、父親の代まで茶農家だった。
「伊藤園」(東京)のペットボトル飲料「お~いお茶」の原料に大半が使われる。地元の農家からは「作業効率の悪い畑は扱ってもらえない」との指摘はあるが、12ヘクタールから始まった農地面積は70ヘクタールに広がった。先月、7億円をかけた新工場が完成した。約半分は、市と県を通して国の補助金を受けた。
時代に翻弄され続ける狭山茶
約15ヘクタールと金子台で…
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