名古屋・栄の地下街に、創業100年を超える老舗のお茶専門店があります。新型コロナの感染が広がり始めた2020年3月に社長に就任した若き4代目は、苦境の中でも前を向き、伝統を守りつつも若者に人気のドーナツ店とのコラボ商品を開発するなど、新しい挑戦を続けています。
■その場でたてた抹茶をミルクと合わせ…老舗のお茶専門店が作る本格的な「抹茶ラテ」
名古屋・栄の地下街にある「妙香園(みょうこうえん)サカエチカ店」。店先で回るほうじ機からは、豊かな香りが広がります。
【画像20枚で見る】大正5年創業のお茶専門店 人気ドーナツ店とコラボ“攻めと守りのバランス”で生む新たな風
女性客:
「ここ通るといい香りがして、ホッとします」
別の女性客:
「香りはリラックスできるし、味も飲みやすい」
ここに2020年、おしゃれなカウンター「MYOKOEN TEA STORE」ができました。一番人気は、その場でたてた抹茶をミルクと合わせた「抹茶ラテ」(540円)。
ほうじ茶パウダーとミルクを合わせた「ほうじ茶ラテ」(518円)も、年齢を問わず人気です。
新たな挑戦を続けるのは、4代目の田中良知さん(42)です。
4代目の田中良知さん:
「先代の会長が元気なころは、お茶にミルクを入れるなんて絶対に許してもらえなかった。今までの非常識、新しいものを発信できるような文化にしていきたい」
■お茶の種類は約1000種類…テイスティングを繰り返し作られるお茶のブレンド
名古屋市熱田区に本店を構える「妙香園」の創業は大正5年(1916年)と、2021年で105年目を迎えます。
お茶専門店として歩み続け、現在は愛知県内に直営店を5店舗構えます。
お店の顔は、抹茶や煎茶、ほうじ茶など約1000種類のオリジナルブレンドのお茶。喫茶店のブレンドコーヒーのように、様々な産地のお茶をブレンドして一つの味を生み出しています。
ブレンドの基礎を作るのが、「テイスティング検査」。この日行うのは「池之尾(いけのお)」という煎茶です。
販売中の商品と、新たにブレンドしたお茶を飲み比べ、香りや味が同じになるように配合を調整していきます。まずは、AからDまで4種類の茶葉をブレンド。まずは色と香りのチェックです。
田中さん:
「今のやつの方が(色が)明るいね。(香りは)ほぼ一緒だけど…」
味をチェックした田中さんは、Aのお茶を少し足そうと提案し、数グラム加えました。
田中さん:
「いや、足さない方が良かった…」
こうした作業を繰り返し、味や香りを寄せていきます。今度はBを加えました。試行錯誤の末、ようやく納得のいくものになりました。
田中さん:
「池之尾が好きなお客さんに同じお茶って言わせるのはすごく大変。お茶は農産物なので、毎年違うものができます。それをブレンドで同じお茶に近づけていくのに一番苦労があり、一番大変なところ」
■より敏感にお茶の味を感じるために…社員食堂はベジタリアンメニュー
繊細なお茶の香りや味の違いを見極めるには、体調管理がとても大切。そのため、田中さんは子供のころから肉も魚も食べない生活を続けています。
妻に協力してもらい、家の食事は野菜中心にしました。田中さんの味覚や嗅覚などの五感が、妙香園の味を守っています。その信念は、田中さんがいつも昼食をとる社員食堂にもあります。
田中さん:
「今日は『おからこんにゃくのアジフライ風』と、『大豆ミートのチンジャオロースー』。全部ベジタリアン仕様」
おからこんにゃくに海苔を巻いてアジフライ風に。チンジャオロースーには、大豆ミートを使いました。毎日、社員食堂はベジタリアンメニューです。社員の皆さんは、物足りなくないのでしょうか。
男性社員:
「十分です。逆に自分でコントロールして少なくしているくらい」
別の男性社員:
「おかげさまで健康で、大きな病気もしないですし…。より敏感にお茶の味を感じたり」
ベジタリアンメニューは、社員の皆さんにも好評のようです。ちなみに田中さん、失礼ながら見た目がベジタリアンに見えないのですが…。
田中さん:
「言われるんですよ…。痩せようと肉を控えていたのに夢を壊すなって。でも、草食恐竜も草食動物もみんなデカいので、自然なんじゃない」
■コロナ禍でも「攻める」…新たなプロジェクトは人気ドーナツ店とのコラボ
田中さんは、新型コロナが広がり始めた2020年3月に社長に就任。街から人が消えましたが、田中さんはこれをチャンスと、前を見続けてきました。
田中さん:
「栄・名古屋駅の店は大打撃。いまだに30%くらい売上が落ちていますね。でも、ここで踏ん張っていかないと」
2021年9月、田中さんは人気ドーナツ店とのコラボを始めました。コラボするのは、2006年に愛知県岡崎市で誕生したドーナツ店「ZARAME(ザラメ)」。愛知県内に6店舗を展開する手作りの味が若い世代に人気の店です。
この日は、ドーナツの試作。砂糖に2種類のほうじ茶パウダーを加え、お湯で伸ばしてコーティングを作ります。生地にもほうじ茶を加えました。試作はこの日が3回目。これまで、甘さの加減に苦戦してきました。
ZARAMEの担当者:
「ほうじ茶の風味を生かすために、他のドーナツと比べて甘さを抑えた感じにしようと」
妙香園のほうじ茶は、その香りと風味が自慢。一般的なドーナツにはない材料のため、今まで通りのレシピは通用せず、まさに一からの配合です。ドーナツにコーティングを施し試作品の完成です。
田中さん:
「想像していたよりも、トロっとした感じがおいしそう。焼き菓子にほうじ茶の香ばしさはマッチするなと改めて思いました。もう少しほうじ茶が出ると、なおいいかな」
その後、さらに改良を重ねて期間限定の「チョコレートケーキドーナツ(ほうじ茶・抹茶)」(各350円)が完成し、直営店で販売しました。
田中社長:
「守ることが多すぎると新しいことができないし、新しいことをやりすぎると今までのお客さんが離れていってしまう…。攻めと守りのバランスが一番キモだと思っています」
伝統を守りながらも新たな風を…。創業100年を超える老舗のお茶専門店の挑戦は続きます。
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