〔連載〕京都の暮らし、お茶の日々
日々の暮らしの中で茶の湯や日本文化を楽しむ方法を、出版、商品開発等を通して提案する「水円舎(すいえんしゃ)」を主宰する京都在住のふくいひろこさん。ふくいさんが1年にわたって綴った「茶箱あそび、つれづれ」の続編として、四季折々の茶箱とともに、京都のおすすめの場所をご紹介します。
6月 内なる自分のために、茶を喫し、香を聞く
今年は季節の進み方が少し異なるようで植物たちのめぐりもいつもより早めです。 人間の我々は? わたしたちも大いなる地球の生き物の一員ですから、天地のめぐりとどこかでリズムが重なっているに違いありません。長雨が続くこの季節、自身の心と身体、そして魂の状態に、いつもより少しだけ注意を払いたいものです。
自分をもてなす一服を
そんなときには、お茶。特に朝の茶には心身の状態を整えてくれる力を感じます。 朝から鉄瓶でお湯を沸かし、キッチンのスタンディングスタイルでせっせとお茶を点てています。和菓子も春仕様から夏のものへと移行し、口当たりのつるんとしたものが増えてきていますから、「今年の味見」などと称していただきます。 お茶を美味しくいただくためにいちばん大切なのは、茶と湯ではないでしょうか。茶の湯とはまさに言い得て妙ですが、お茶とお湯に気を使うと日々の茶の味わいが変わるような気がします。 まずお湯。朝の忙しいときには簡単手軽にすぐに湧く電気湯沸しポットが便利ですが、我が家では鉄瓶を愛用しています。茶席の鉄釜に倣い、必ずしっかりと沸騰させます。陰と陽、水に火の力を加えるという思想。 水は近所の神社の湧き水をいただいてきます。朝目覚めると散歩に行くことが多いので、その帰り道に汲んでくるのが日課。もちろんお好みのミネラルウォーターや浄水でも大丈夫ですが、大切なのは、水を吟味し、「心をいたす」ことかなあと。 そして茶ですが、ストックしてあるものを漉してから点てます。いや、白状します。自分用のお茶は毎日漉すわけではなく、まとめて漉しています。 しかし、今日は、お茶を点てる直前に漉して、茶器にちゃんと入れました。そんなこと、いつもしているわという方もいらっしゃるかと思います。ほんとうにそう。お茶を点てる前の手順を丁寧にすると、気持ちが落ちつくなあ。もちろん茶碗も茶筅もお湯で温めます(これは毎回しています)。 そして、いつものスタンディングスタイルではなく、お盆に道具を揃えて、テーブルでちょっと息をととのえてからお茶を点ててみます。 マインドフルネスという言葉、すでに日常的に使われるようになりましたが、お茶を丁寧に点てているとまさにこの状態になってきます。 キッチンでの点茶でも集中するとマインドフルネスは得られるのですが、自身の内側が散漫に感じる時は、あえていつもより丁寧に、茶を点てる。始める前は「ちょっと面倒だな」と思うのですが、その気持ちを振り払って手順を追うと、いつしか呼吸が整って、穏やかな気持ちになっているのです。
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