飲料大手「伊藤園」の狙いは
- 2022年06月27日
最先端のデジタル技術を使ったDX=デジタル変革で鹿児島県内の1次産業が大きく変わろうとしています。全国トップクラスの生産量を誇っている鹿児島の茶畑でも、タブレットやスマホが手放せなくなってきているんです。背景にはあの大手飲料メーカーからの働きかけも・・・。どういうことか取材しました。
(鹿児島局記者 猪俣康太郎)
摘み時はスマホやタブレットで
5月31日、私は曽於市にある茶畑に向かいました。今まで長年の経験や勘が必要だったお茶の摘み時の判断が、いまやスマホとタブレットでできるというのです。男性が手にしたタブレットで茶葉を撮影すると・・・
収穫時期を判断する際に必要なアミノ酸や繊維の量がでてきました。AI=人工知能が推定しているといいます。
伊藤園 吉田光さん
「アミノ酸量というのはお茶のうまみの指標のひとつで、繊維量は芽の成熟度とか固さをあらわしていて推定しながら実際の収穫の時期を決めている」
このシステムを開発したのは、飲料大手の「伊藤園」と「富士通」です。ことしの春から鹿児島など九州を中心とした契約先の茶畑で試験的に導入が始まりました。
茶葉のスマホ診断 その仕組みは
どうして画像だけでうまみや固さがわかるのか?。そこには2年間におよぶ膨大なデータの蓄積がありました。伊藤園では2年前から茶葉の撮影を開始。さらに撮影した茶葉のアミノ酸と繊維量を調べ、画像と成分のデータの組み合わせを集めてきたのです。集めた画像は後から色味を調整したものも含めるとおよそ8500枚。
その画像と成分のデータの組合わせを富士通と協力してAIに学習させました。その結果、茶葉の画像と成分との関係性が導き出されたのです。
伊藤園 吉田光さん
「熟練されている方は手触りとかで判断されるんですけど、なかなかそれが難しいので、客観的な数値で評価していくようにしています」
コスト削減・業務の効率化にも
茶農家はどう受け止めているのか?。伊藤園と契約を結んで曽於市や志布志市など70か所の茶畑でお茶を生産している農業生産法人を訪れました。
この法人では茶葉の成分を分析する機械を導入していますが、その値段は700万円もします。さらに、茶畑から茶葉を持って来て機械に入れる必要があります。
メルヘン農園 重信秀治管理部長
「生葉を摘んでここに帰ってきて時間的なロスもありますし購入の価格が高い分析機ですので」
タブレットの導入でコスト削減に加えて業務の効率化にもつながると期待しています。
メルヘン農園 重信秀治管理部長
「スマホで繊維のおおまかなデータがでれば畑で判断がつくし今までの勘と、茶葉を粉砕して使う今の機械もすごいなと思いましたが、さらに進歩しているなと」
AIがお茶の味も図式化
さらに、製品として仕上げる前の「荒茶」の画像からAIが味を推定する技術も開発されています。スマホで撮影すると出てきたこちらの5角形。
アミノ酸や渋みのもとのタンニンなどの量をあらわしています。
伊藤園 吉田光さん
「青い五角形が囲まれているところが基準の値になります。トータルで見るとほぼ基準内の一般的なお茶になるのかなと思っています」
福島県の企業が開発した野菜などの「色のデータ」からAIがおいしさを図式化する技術を応用しています。
背景には茶農家減少への危機感
伊藤園がこうした技術が開発している背景にあるのが茶農家の減少に対する危機感です。
高齢化などによってお茶を栽培する個人や団体の数はおととしまでの10年間で1万5000以上減少。茶葉を安定的に確保していくことが課題となっているのです。
伊藤園 佐藤貴志課長
「お茶農家さんは減少の一途をたどっていまして原料調達に危機感を感じておりました。
IT技術ですとか、AIの技術でサポートしていきたいという思いがありまして病害虫ですとか、農薬のこととか肥料のこととか問題はまだまだありますので、そういったものを我々の手で少しでも軽減できるような技術作りをしていきたいなと思います」
AIを使った新技術。伊藤園では来年からの本格的な導入を目指して準備を進めています。
取材後記
お茶農家の減少は茶畑の集約化も要因にあるということですが、減少幅を見ると危機感を抱く気持ちもわかります。お茶はお茶の木を植えたり、熟練の技術が必要なこともあり、新規就農が難しい品目だと言われています。DX=デジタル変革で、新規就農者が増えていくことに期待したいと思います。
からの記事と詳細 ( 鹿児島1次産業DX お茶×AI 茶畑でスマホが必需品に - nhk.or.jp )
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