津市のイタリアンレストランが今年から始めた「オーダーメイドコーヒー体験」が、口コミで話題を呼んでいる。三重県内に数人しかいない「アドバンスド・コーヒーマイスター」の資格を持つ焙煎(ばいせん)士が、一人ひとりの好みに合わせたオリジナルブレンドをつくり、ほっと一息つけるコーヒーを提供している。
体験ができるのは、津市大里睦合町の「パスタスタジアム よろこば食堂」。ランチの時間は、パスタやピザなどのイタリア料理を楽しむ客でしばしば満席になる人気店だ。レストランの横にある、ビニールハウスが体験会場。ハウスに入ると、コーヒー豆を煎る香ばしいにおいが漂う。
試飲では、酸味や苦みの異なる3種類のコーヒーを用意。焙煎の時間や抽出するお湯の量を調整しながら、好みの味を見つける。何度も試飲し、微調整を重ねるため、1回につき1時間半程度の時間がかかるという。
体験の講師を務めるのは、店のコーヒー部門を担当する小柴伸二さん(58)。店を経営する大地さん(33)の父親だ。小柴さんがコーヒーに目覚めたのは、30年ほど前。当時は四日市市のショッピングセンターの中で喫茶店を経営していた。喫茶店でありながら、店のメインは昼間のランチ営業。コーヒーは、定食のサービスで出す程度だった。「喫茶店の原点ってなんだろう」。忙しく日々を過ごすなかでふと疑問が湧いた。「一度、原点に戻ってコーヒーを勉強してみようか」。そんな思いから、足を運んだ自家焙煎のセミナーが小柴さんの大きな転機となった。
セミナーの講師は、東京の老舗自家焙煎の店「カフェ・バッハ」の店主・田口護さんだった。田口さんがいれたコーヒーを一口飲むと、衝撃が走った。「今まで飲んできたコーヒーとは全くの別物だ」
そこから、小柴さんは「カフェ・バッハ」に顔を出すようになり、田口さんから焙煎や抽出の技術を学んだ。技術以上に、田口さんが繰り返し伝えたのは、コーヒーをいれる者としての心構えだった。「カフェは人と人とがつながるところなんだ」、「コーヒー豆の生産国の現状や、コーヒーの歴史も勉強しなさい」――。田口さんから教えを請おうと、小柴さんは3カ月に一度、約20年間にわたり足しげく通った。
コーヒーの歴史や豆の特性を学んだり、焙煎の技術を磨いたりして、2015年に日本スペシャルティコーヒー協会(東京)の「アドバンスド・コーヒーマイスター」の資格を取得した。同協会によると、アドバンスド・コーヒーマイスターに認定されたのは、県内に6人しかいないという。
田口さんの教えは、小柴さんのオーダーメイドコーヒー体験にも濃く表れている。試飲の前には、必ずコーヒーが安く買いたたかれていた歴史や、品質の良い豆は相応の値段で買うことなどを丁寧に説明する。小柴さんは「SNSで発信するだけでなく、顔を合わせて話す機会をつくることで、人と人をつなぐカフェの役割を果たしていきたい」と話す。
体験は1回3千円。ブレンドしたオリジナルコーヒーは300グラムをお土産として持ち帰りできる。体験をギフトとして送ることも可能。問い合わせは「パスタスタジアム よろこば食堂」(059・253・4650)へ。(岡田真実)
からの記事と詳細 ( 「あなただけのコーヒーを」オーダーメイドの輪 三重 - 朝日新聞デジタル )
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