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日が短くなってきましたね。秋の夜長は熱いお茶でも飲みながら読書するのにいい時間だと思います。
【写真】茶葉が入ったカクテルもあります この連載は、医学知識を横目で見つつ、ちょっと不健康な生活を小声で応援します。ちょっと不健康というのは、好きな食べ物や飲み物が実は体に悪いとしても、好きなら飲んだり食べたりすればいいということです。 お茶は健康的なイメージがありますね。緑茶が血圧を下げるという研究データ(*)があるほか、お茶の健康効果はときどき話題になります。もともと緑茶を飲む習慣のある日本や中国はもちろん、紅茶を飲む国でも茶葉と健康の関係について関心は高く、無数の医学論文が書かれています。 ただし、ヨーロッパ系の人にとって緑茶は身近な食品と言うよりもエキゾチックなイメージがあり、ときには神秘的な効果を期待させ、ときにはえたいの知れない害をもたらすものとみなされているようです。 オーストラリア保健省のウェブサイト(*)は茶葉抽出物がまれに肝障害を起こすことに注意を促しています。サイトによれば、茶葉抽出物は多くの医薬品の成分として使われ、多くの場合は濃縮されているとのことです。おもしろいことに、このサイトでは「Camellia sinensis (green tea)」という表現が繰り返し現れます。 カメリア・シネンシスというのは茶の木の学名です。緑茶も紅茶も発酵の度合いが違うだけで、もとは同じカメリア・シネンシスなのですが、薬になったり毒になったりするのはなぜか緑茶のほうだと思われているようです。 カナダ保健省は、茶葉抽出物による肝障害のリスクを理由に、茶葉抽出物を含む製品は子供には勧めない立場をとっています(*)。 欧州食品安全機関の資料(*)によると、ベルギー、フランス、イタリアで、茶葉抽出物のサプリメントを飲む量に上限が指定されています。 緑茶はそんなに危なかったのでしょうか。熱いお茶でやけどを繰り返していると食道がんになるのではないか、といった議論もありますが(*)、それはほかの飲み物にも言えることなので省きます。 肝障害については多くの報告があります。散発的な事例としては緑茶抽出物入り飲料を大量に飲み続けていた人に筋力低下が現れた例(*)、アレルギー反応によってぜんそくが現れた例(*)などさまざまな事例が報告されています。 もちろん、ひとりひとりについて因果関係を立証するのは非常に難しいことです。中にはたまたま隠れていた病気が見つかる直前に、お茶を飲んだだけの人もいるかもしれません。 もともと心房細動の治療中だった人に一過性脳虚血発作が起こった例(*)、過激なダイエット中に不整脈が起こった例(*)がお茶と結びつけて報告されていますが、さすがにお茶は無関係ではないかと言いたくなります。 とはいえ、カナダやヨーロッパという、緑茶を飲む習慣もない国で、まして濃縮したサプリメントを主に問題にするならば、用心のために緑茶抽出物を避けるという判断は理にかなったことなのでしょう。 日本で同じ注意を出せば生活に影響が出る人がいるかもしれません。 つまり、食品の健康リスクをどうとらえるかは、国ごとの文化によって違っているのが当然です。 いまの食生活をできるだけ変えないように、身近でないものを悪く言い、身近なものはほめるほうに偏るわけです。これは当たり前のことです。だからヨーロッパでは緑茶を妙に警戒するのです。 では日本人はどうでしょうか。日本人は逆に、身近だからこそ緑茶をひいき目に見てしまうのではないでしょうか? 実際に緑茶の効果として臨床試験で示されているのは、せいぜい血圧が1mmHg下がるかどうかという程度です。その現実と比べてみれば、テレビや雑誌にあふれる「がんに効く」とか「認知症に効く」と思わせる説明は、「どうせ緑茶なんてみんな飲んでいるから、間違っても怒られないだろう」という高をくくった態度に見えます。みなさんの目にはどう見えますか? 筆者はべつに、緑茶をほめるのが悪いこととは思いませんし、お茶の間をにぎやかすメディアが医学的に正確でなければならないとも思いません。ただ、そんなに無理をして健康効果をでっちあげなくても、お茶のおいしさとかお茶のある生活のすばらしさを語ればいいのに、と思います。 この連載の狙いは、学問の権威を借りて健康効果を語る茶坊主のようなメディアには茶々を入れ、へそが茶を沸かしそうなテレビの茶番には水を差し、健康被害を理由に善意で生活を圧迫してくる人に向かってはお茶を濁し続けることです。 茶道の心を教えたとされる「利休道歌」に有名な一首があります。 茶の湯とはただ湯をわかし茶を点(た)ててのむばかりなることと知るべし お湯を沸かし、お茶を入れて、飲む。健康情報などなくても、それでよかったのではないでしょうか? * Medicine (Baltimore). 2020 Feb;99(6):e19047. *https://ift.tt/2Hl9AqM *https://ift.tt/3uHSn5r *EFSA Journal 2018;16(4):5239. *IARC. Drinking Coffee, Mate, and Very Hot Beverages. *臨床神経学. 2013;53(3):239-42. *日本内科外科雑誌. 2009 Apr 10;98(4):866-7. *Br J Med Med Res. 2013 Jul 18;3(4):2157-2172. *ARYA Atheroscler. 2014 Jan;10(1):55-8.(大脇幸志郎)
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からの記事と詳細 ( 欧米で緑茶は「要注意」のわけ お茶でも飲みながら考えましょう (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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