童謡「茶摘み」でも歌われているように、立春から「八十八夜」目(2020年は5月1日)の前後、春から初夏にかけて茶摘みが行われ、茶舗(ちゃほ)の店先から「新茶」の香りが漂ってきます。いまこそ日本茶の“旬”といってもいいでしょう。
お茶のおいしさを引き出すには、適した水を使い、それぞれに合った温度でいれることがポイントとされます。とくに新茶の場合、どうすればよりおいしく味わえるのか。株式会社伊藤園広報部に教えて頂きました。
「新茶」と「一番茶」は基本的に同じお茶のこと
「『新茶』とはその年の最初に生育した新芽を、摘み採ってつくったお茶のことです。よくいわれる『一番茶』と新茶は基本的に同じお茶のことで、呼び方が異なるだけです。一番茶はその後に摘み採られる二番茶、三番茶などと対比して使われることが多く、新茶は『初物(はつもの)』の意味を込めたり、旬のものとして強調したりする際などに使われます」(伊藤園広報部)
お茶の摘み採りは、鹿児島県の種子島(たねがしま)など南国の温暖な地域から始まり、徐々に日本列島を北上していきます。おもな産地での新茶(一番茶)の摘み採り時期はおおむね、鹿児島県が4月上旬~5月上旬、静岡県が4月中旬~5月中旬、三重県が5月上旬~5月下旬、奈良県が5月中旬~6月上旬とのことです。もちろん同じ県内でも標高など、茶園の立地条件によって摘み採りの時期は前後します。
「新茶の特長は、何といっても若葉の“さわやかで、すがすがしい香り”にあります。また、新茶は二番茶、三番茶に比べて苦み・渋みのあるカテキンやカフェインが少なく、旨(うま)み・甘みの成分であるアミノ酸が多い傾向にあります」(伊藤園広報部)
カテキンの含有量は新茶が12~14%に対して、二番茶では14~15%、以降次第に増加していきます。一方のアミノ酸は、お茶特有のテアニンという物質が半分以上を占め、二番茶より新茶、新茶のなかでもとくに若い芽に多く含まれているそうです。
適温は70~80℃、抽出時間は40秒が目安
それでは、新茶の特長を生かすには、どんないれ方をすればいいのでしょうか。
「新茶をおいしくいれるための目安は、茶葉の量が1人あたりティースプーン2杯ほど、湯の温度は70~80℃、湯の量は150~200ミリリットル、抽出時間は約40秒となります。具体的には次のとおりです。
(1)急須(きゅうす)に茶葉を入れます。茶葉は心もち多目に入れたほうが、味わいが深くなります。
(2)お湯は一度湯呑(ゆのみ)に注ぎ、70~80℃まで湯冷ましして、急須に注ぎます。
(3)約40秒抽出したのち、急須を軽く2~3度回します。これにより茶葉が開いて、味がしっかりと出ます。
(4)少しずつ均等に注ぎ分け、最後の1滴まで絞りきります。
さわやかな香りと、ほどよい渋みを楽しみたい場合には、80℃ぐらいのやや熱めの湯で、さっと抽出するとよいでしょう。逆に、湯を70℃くらいまで冷ましてからじっくりと抽出すると、旨みの多い味わいになります」(伊藤園広報部)
いまからの時季、「伊勢(いせ)茶」と呼ばれる三重県産、「大和(やまと)茶」の奈良県産の新茶が、ちょうど旬を迎えます。静岡県産でも標高の高い大井川中流域で栽培されている「川根(かわね)茶」も摘み取り時期がほかよりやや遅いため、まだまだ新茶が楽しめます。なお、商品としての日本茶の北限は新潟県産「村上(むらかみ)茶」とされています。
新型コロナウイルスの影響で、自宅に籠(こも)りがちの日々。お湯の温度などに気を配って新茶をいれ、格別の香りと甘みを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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